CA州でファーストフード店員の最低賃金が$20に
- 上原孝詔
- 2024年4月11日
- 読了時間: 4分
更新日:2024年4月15日

2023年1月よりCA州での労働者全体の最低賃金が時給$15.50となり, 2024年1月1日からは時給$16へと最低賃金が引き上げられました。
また連邦政府としてもバイデン大統領は、連邦最低賃金を時給$7.25から$15.00に引き上げる声明を出しましたが、これについては、現時点、近い将来に実現する見通しはないようです。
2023年9月28日、CA州のニューサム知事は、雇用者が労働者に払うべき最賃の引き上げ法案「ファスト法」と呼ばれる法案(Fast Food Accountability and Standards Recovery Act)に署名、CA州のファストフードで働く労働者の最低賃金が$15.50から3割高い時給$20となりました。これにより50万人以上の労働者が恩恵を受ける事になります。ニューサム知事は「ファーストフード店の働き手たちはもう何十年も賃金と労働環境の改善を求めて戦ってきました。勤勉な働き手に発言権のある地位とより強い発言権を与えることで、これまでよりも公平な賃金と安全で健全な職場環境に向けて一歩近づくことができました」と述べており、民主党の基盤である労働者団体等は、この最低賃金上昇に歓迎の声を上げています。
実はこの法案に署名する前の2022年9月5日、スターバックスやマクドナルドを含む、全米で100店舗以上の展開を行うファストフードチェーンを対象とし、2023年1月1日から最低賃金を時給22.00ドルに引き上げる法案(AB 257)を州議会が僅差で可決、ニューサム知事が承認していましたが、国際フランチャイズ協会と全米レストラン協会が同法案に反対する努力を重ね、両者は組合の代表とともに交渉のテーブルにつき、今回の合意に達した経緯があります。
ロイター通信によるアメリカ労働統計局のデータをもとにした報道では、アメリカのファーストフード店員の平均時給は$13.431(2022年)。CA州の平均時給は$16.60と平均よりはすでに高かく、引き上げ後の最賃を年収換算すると$4万1600になるとの事。
一方、マクドナルド、ウェンディーズなどのフランチャイズチェーンが加盟する米フランチャイズ協会(IFA)は声明で「価格引き上げが起きることで地域経済に損害を与え、カリフォルニア州の労働者保護も改善されることはない」と同法に反対の立場を示しており、IFA会長のマシュー・ハラー氏は、同法がフランチャイズビジネスモデルに打撃を与えると指摘、「他の州が苦しまないようにするために戦いを止めない」と表明しています。
当事者であるフランチャイズオーナーは、今回の賃上げにより、労働者の最低賃金は29%引き上げられるが、仮にファストフードレストランのレイバーコストレシオ(売上における人件費率)を30%とすると、レイバーコストは8.7%増える計算になります。増加分を吸収するには値上げをする必要がありますが、ただでさえインフレの影響でメニューの値段が上がっている昨今、簡単に値上げは出来ないのが現状で、フランチャイズオーナーは、苦しい岐路に立たされました。ピザハットでは、賃上げを見据え、昨年12月に自社でのデリバリーを廃止し、Uber Eats等での配送に変更、結果として1200人以上の配達員がレイオフとなりました。マクドナルド等多くのファーストフードチェーンは、今回の人件費の上昇分は、価格に転嫁するしかないと声明を出しており、既に一部では値上げを実施。同時に多くの労働者が、シフトを減らされたり、労働時間が削られています。
今後利益を確保為に、多くの経営者が行うと予想されているのが店舗の「省人化」となります。ファストフードレストランの場合、多くの労働者が注文受付や接客の仕事をしてますが、これをキオスク端末や音声認識AI、あるいは接客ロボットなどに切り替える機運が高り、従業員の賃上げを機にそうした動きに拍車がかかる可能性が高いと思われます。
キッチンスタッフについても、ハンバーガー調理ロボットやフライヤーロボットなどでリプレースし、省人化を進める機運が高まる可能性があります。実際に、アメリカの飲食店経営者の90%がキッチンロボットの導入を検討しているというデータもあり、高騰する人件費を嫌い、人間より安く雇えて文句も言わずに長時間働くロボットへ飲食店経営者の目が向くのは必然的と見られております。
コロナ渦前までは、家族3人で$30以内でハンバーガーを食べられましたが、今後は家族3人でも$40以上に支払いとなる為、ファーストフードが高級品に感じる日も近い将来やってくるのでしょう。
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